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パリ発 五感の穴

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往復書簡

私には定期的に手紙を書く相手がいる。

電話でも済んでしまうことだし、大して何か用件があるわけでもないのだが、その人のことを考えると、つい筆をとってしまう。旅先はもちろんのこと、東京にいても葉書や便箋を店先で見つけると、その人のことを思い浮かべてストックを買ってしまう。

祖母はたいてい私からの葉書がくると大喜びしてくれる。年も召しているので、最近は特に物忘れが多いのだが、その中でも葉書がきたという喜びと、自分も私にお返事しましょう、という意気込みを、日々祖母の世話をしている母に伝えるようだ。

昔の人だけあって、祖母は習字が上手い。郵便局で買ってきた真っ白な葉書一面に、さらさらと文面を書いて送ってくる。近況報告をし、私の近況や身体のあんばいを尋ねる。何でも感動や驚きを素直に表現する人なので、葉書の文面も活き活きしている。自転車に乗って一人で散歩に出かけるのが祖母の日課だが、そうはいっても若い私ほどフットワークが軽いわけではない。旅先からも手紙をしたためる。遠出がおっくうになった祖母の、専属旅先案内人を買って出ている。

往復書簡が途切れることもある。祖母が面倒ぐさがって、手紙よりも電話を選ぶときだ。少し恥ずかしがりながら、ごめんねぇ、手紙を書こうと思ったんだけれどねと前置きをする。そんな時は、お祖母ちゃんの声も嬉しいけど、手紙も嬉しいなぁと伝える。

往復書簡は、大切な祖母との関係をつなげていくだけでなく、祖母のリハビリの意味もある。テレビをみましょう、困ったことがあれば母に頼りましょう、という生活スタイルが身に付いた祖母が、自分で何かをすること、それが祖母の物忘れの軽減にもつながるからだ。

何歳になっても、自分で動くことは尊い。

長生きしてね、おばあちゃん。
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by Haruka_Miki | 2006-03-04 00:00 |
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