ブログトップ

パリ発 五感の穴

fivesense.exblog.jp

その日がやってきた

悠長な話です。その日、自宅にて、いつもの様に夕飯を囲んでいました。
f0079502_1522331.jpg
(プチ・パレの中庭はちょっとしたお忍びスポットです)

カルボナーラと新鮮なサニーレタスのサラダを食べて、頂き物の世にも美しいピエール・マルコリーニの玉虫色のマカロンを食べてご機嫌なソワレをしているところ、今までとは異なる感覚と痛みを伴う兆しが見られたのでした。時間を計ってみたところ規則的なので一応出かけてみることに。兆しが訪れる時以外の時間を見計らい、ゆっくり至近のタクシー乗り場に歩いて行きました。タクシーから見える青黒いセーヌ河と街並みが美しいことを見る余裕がある時とそうでないことが交互に訪れ、そうこうしているうちに目的地に到着しました。事前に言われていた窓口に出向き、確認をすると今日はもう帰らないでここにいてね、今夜中よ、とのこと。正直、そんなつもりがない程度の兆しだったのでびっくりしました。

この国に魅せられることは多いのですが、今までで一番感銘を受けたのは、医療と社会保険の制度の良さと質の良さでしょうか。特に生を授かるこのセクションはとてもプロフェッショナルであり、安心して身を預けることができるのです。初めて見るその部屋はシンプルながら必要なものが取りそろえられており、部屋に入る道でも新しい命の泣き声が聞こえてきました。

日本で同じ経験を通る方とは比べ物にならないと思うのですが、一通りの痛みを経験し、その後麻酔を打ってもらいました。とはいえ、それでもシースルー越しに感じられる痛みというのは確実にあり、時が熟すのを待つ間もそれが徐々に大きくなるのでした。鋭い波が行っては帰る、そういうのを6時間程経験してから、いよいよ先生を呼びましょうということになって、その時がやってきたのでした。

よく、産む、という言葉を使うと思うのですが、私自身の経験では、間違いなくこちらはその営みをassister(助ける)側であるにすぎず、本当に大変なのはそこを通ってくる小さな存在なのだと強く思いました。十月十日を通じ育まれ、時満ちてさぁ出てみようと思う弱くて小さいけれど確実に力強いその存在。それは超現実的で神秘的で不思議な経験でした。痛いとか怖いとか面白いとかでなく、その神秘に寄りそう経験は唯一無二でした。

何の縁かは分かりませんが、そんなこんなで母になりました。

ブログはあくまで私の話でありますので、意思疎通ができるわけでないその人についてあまり話すこともできませんが、それでも今まで経験したことがない種類の経験であることは間違いなく、その意味ではこんなに興味深い体験もないわけで、時を見て投稿出来ればと思います。
[PR]
by Haruka_Miki | 2010-08-31 00:00 |
<< 花と果物と電話 太陽がいっぱい >>