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パリ発 五感の穴

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「すっげーんだぜ」

小学生のときのことを書いたら、なぜか小学3年生の頃のあの子を思い出した。

同級生の男の子の一人(前田くんてことにしておこう)は、とても人がいいタイプで、シャイだけど、大げさに色々なことを話してくれる子だった。たまたま同じ習字教室なるものに行っていて(習字したり、かるたしたり、小学生も忙しいもんだ)、そこで前田くんはある自慢をし出した。

「おー、そういえばなぁ、すっごいんだぜぇ」
何がすごいんだろう、と教室の子どもたちは聞いてた。

「田中(という子が同級生にいる)がなぁ、今度家族でハワイ行くんだぜぇ」

ほーっ、と皆目を輝かせた。ハワイ。そう、あの青い海、生い茂る椰子の木、透き通った空の、ハ・ワ・イ。80年代の赤や黒のランドセルの小学生にはそれはそれは刺激的な響きだった。そして前田くんは続けた。

「田中もすごいけどなぁ、うちもすごいんだぜぇ」

うんうんと聞いた。なにがすごいんだろう、エメラルドグリーンの海以上なのかしらと誰もが期待した。

「うちなんかなぁ、伊豆のなあ、民宿にみんなで行くんだぜぇ、すっげーだろ」

子どもでも、ハワイと伊豆の民宿も、随分違う場所なことは把握できたのだけれど、彼の勢いに圧倒されて、ふーんと聞いた。あとで、家に帰って面白くなって、夕飯の支度をする母に、今日は前田くんがすごく面白かったんだー、って話した。

多分前田くんは、仲良しの田中くんのビッグニュースが嬉しくて、つい自分のことのように皆に報告をし、その後、自分もいいニュースがないかなと考えて、民宿に行くんだった!って思い出した。自分のことも話して、やっぱりハワイとはちょっと違うのだけれど、小学生にとっては、それでも十分楽しみな出来事だったんだ。はにかみながら、彼は楽しそうだった。

なんか、

今私たちは満たされてて、満たされていること自体も、その意味もよくわかってなかったり、当たり前になっていたりして。

でも、幸せってそんなもんなのかも。感じ方次第で、どんなことも「すっげーんだぜ」になるんだと思う。自分の悦びも、そして人のこともそんなに嬉しそうに自慢できちゃう心の持ち主の前田くんは、つくづく「幸せ者」だなぁと思った。
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by Haruka_Miki | 2006-10-12 00:00 |
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