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パリ発 五感の穴

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柳緑花紅を今一度

柳緑花紅を今一度_f0079502_0285280.jpg柳はみどり、花はくれない。お茶のお稽古で拝見した掛け軸にあった禅語の如く、春の情景はあまりに麗しく清清しい。

気持ちがいい春空の下で、桜の木々は白にも近いピンクの花びらを少しだけつけて、散り行く定めを静かに受け止めているようにも見える。近所の桜の下を通ると、その花もひらりひらりと舞い降りる。ここ何日かで、一段と薄緑の葉の部分が多くなってきたように思う。さて、そんな中、土曜日に先生がボランティアでお手伝いされていたお寺の花祭りの野点に伺った。境内には葉桜が、誇らしげに咲き、その下で薄茶とお菓子を頂く贅沢は、この季節、日本という地に居る特権でもあろう。

柳緑花紅を今一度_f0079502_016661.jpgお茶の楽しみと言えば、そうした季節を意識的に取り込ませてくれるという点も大きく、季節毎にお道具が変わるのを拝見するのも、とても尊い点である。その期待に漏れず、昨日は、桜の季節にふさわしいお道具に触れる機会があった。「大堰川棗(おおいがわなつめ)」である。京都の上桂川は桂川になり、その後に大堰川、再び桂川と称され、最終的には大阪の淀川となって流れていく。桜の木目が美しく、13個の桜の花が描かれた棗は、この大堰川にちなんで「大堰川棗」と名づけられたそうだ。

さて、ただ華々しい花の美しさだけでなく、炉淵に使われた文様にまた目が留まった。「海松浪(みるなみ)」の文様は、ミル貝と波の図柄を合わせたものを指し、春には気が早いようにも思えてしまう、初夏の装いがすでにそこにはある。それは、春の悦びと同時に、初夏の気配を感じさせてくれる。

まさしく、「柳緑花紅」を、上っ面の言葉だけでなく、茶道を通して今一度感じた次第である。
by Haruka_Miki | 2007-04-09 00:00 | Nippon
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