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パリ発 五感の穴

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鈍行列車の旅②武相荘

f0079502_18201417.jpg小田急線鶴川駅で途中下車をし、白洲次郎・正子夫妻の旧白洲邸に立ち寄った。その名も「武相荘(ぶあいそう)」である。

敗戦を予期した白洲次郎氏が食糧難を見込み、当時の鶴川村に移住したのだそうだ。茅葺き屋根の母屋に、家具や食器、上品な色の紬の着物などが飾られており、当時の生活に思いを馳せることができる。母屋の右手部は、元々水牛の飼育をするための場所があり、そこにタイルを敷き詰め洋室を作っているのだが、木と茅葺きでできたこの日本家屋に、不思議とマッチしている。

さて、粋とは何かを理詰めで攻めたのが九鬼周造氏(もっとも、ご本人も大層粋な方だったとの談も読む)だとしたら、白洲次郎・正子さんほど本を読むだけで、美しさや粋が際立つ方々はそうはいないと思う。そんなお二人の住まいもまた、大層美しく、いやしかし作られた美しさかと言えば、住まう人の信念が根づき、歳月を経て育てられた家という印象を強く受けた。

f0079502_18535349.jpg若き時はヨーロッパで勉学に勤め、先見の目を持って農業を営み、公人になることは決してないにしても政治の世界でも強い存在感を示し、往年までポルシェに乗って、テーラードスーツを着こなすだけでなく、晩年はISSEI MIYAKEの服も着こなすなんて、どうも格好良すぎるのである。

真のお嬢様であり、初めて女性としてお能の舞台に立ち、米国の空気にも触れたことがあり、能や民芸の造詣が深く、随筆家としても著名で、生涯美への炎を灯し続けた女性なんて、情熱的で凛としていて美しすぎるのである。

展示にあったお二人の娘さんの牧山桂子さんの言葉がとても印象的だったので、ここで引用。「二人の趣味(hobby)は異なっているように見えますが、趣味(taste)は多分に共通していたと思います。」
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by Haruka_Miki | 2007-05-19 00:00 |
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