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パリ発 五感の穴

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Taxummunication

今日はタクシーに乗った。

タクシーが好きである。そこまで頻繁に乗るわけでもないけれど、たまに仕事先から乗って帰ることもある。タクシー自体が好きというよりは、タクシーの運ちゃんとのあの空間がとても興味深いなと思う。タクシーの運ちゃんは沢山の人生を積んであっちだこっちだ走ると思うと、これはものすごく特異な仕事な気がするから、どうにか運ちゃんの話を聞いてみようという気になる。電車との違いは、電車は不特定多数が乗り合わせるので、会話を交わすことは滅多にないという点だ。

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運ちゃんに対するそのような気持ちが以前大きくなり、ある構想を持ったことがあった。彼らへのインタビューを一つの本に収めたら、相当面白いだろう、政治家やその他の方面の有名人から、新橋のサラリーマンから、銀座のお姉さまで、どんなフィクションよりもグロテスクで、もしくはマスコミの報道よりもリアルな世界が見えるだろうと思う。数年前、いつかそんな本をつくりたいという話をしていたら連れに、「残念だけど、先に書いた人がいたみたい」とある本をもらった。Taxi Driver Wisdomという本だ。そうかー、やっぱり先を越されちゃったかー、と読んでみた。人様の人生を暴露する本というよりは、ニューヨーク・マンハッタンのイエローキャブの運転手達の格言集だが、様々なバックグラウンドの運転手達の目の付け所が面白い。

さて、先日乗ったタクシーの運ちゃんは、ラジオの浪花節に聞き入っていて、浪花節はまぁ、落語のエッセンスもありますし、唱のエッセンスもあって、都々逸のようなところもありますし、まあ理屈はともかくうんぬんの時間帯にラジオを聴いていただくといいと思います、とご丁寧に浪花節が聞けるラジオの時間まで教えてくれた。落語もお好きと見えて、幾つかの落語のお話を持ち出して話してくれた。落語の耳を持っている人は、どうも語り口調にそれが出るのが特長。厚みと情が垣間見える。

今日乗ったタクシーの運ちゃんは総じて話好きで、私が降りてドアが閉まるまで話しをしていた。10分の道のりで運ちゃんは話通しだった。昨日は水曜日なのに道には金曜の如く人が溢れていたこと、やはり長距離のお客は嬉しく、特に高速に乗ってくれると嬉しいとのこと。長距離でも下でえんやこやされては、時間ばかり食うので全く有り難くないこと。夜間は二割増しになって、長距離の料金はやはり減ったこと。運ちゃんのポリシーで新宿周辺では絶対流さないこと。理由を聞けば、昔9年程歌舞伎町でお手拭きの会社勤めで、なんとなくあそこが好かないし、もう十分あの界隈を見たという理由から新宿は避けるとのこと。たまには六本木に出向きたいが、どうもその方面には行かず渋谷区が多いこと。六本木に行きたい理由は、あそこのサラリーマンは長距離でもひょっと乗ってくれるからとのこと。話は戻って、お手拭だけど、あれは一本いくらではなくて、千本幾らという最低料金を各店舗が支払うとのこと。お手拭は大体25回再利用するということ。ただ全てのお手拭が戻ってくるわけではいので、紛失したお手拭分を買い足してたりすると、毎年お手拭の会社はその買い足しに1億円は費やしているとのこと。

すごい会話量だ。「いやぁ、タクシーの運転手でコミュニケーション嫌いな人はあまりいないんじゃないですか。務まらないですもん。」とそれは運ちゃんあなたのことだ。人と話すの大好きでしょう。今日の運ちゃんはざっくばらんな人で、遠慮なく、結構悟っているところもあった。

「ま、なんで話すかと言えば、分からないからね、相手の心なんて。分かるって言うけど分からないことだらけだ。だから話すんですよね。分からないから語るわけだ」と運転手。

そりゃあ人間だから、話している人に対して、もー、なんでわからないかなぁとなることってあると思う。でも、そうだ、分からないから喋るんだ。分かりたいから喋るんだ。そう思ったら、運ちゃんが饒舌なのも、ただのおしゃべりだからだけでなくて、色々な意味合いがあるんだと思った。
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by Haruka_Miki | 2007-12-27 00:00 |
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