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パリ発 五感の穴

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空間自由人

渡仏して3か月。異国に住まうことはやっぱり結構緊張する。私もそうだ。そんな中、本当に来る決断をしてよかったなと思うことの一つは、いくつもあるのだけど、その一つは間違いなくルームメートに会えたことだと思う。縁というのは不思議だな。
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たぶん、お互い個人尊重主義だけれど、共同生活が大好きだから気兼ねがないのだ。彼女は間違いなく、私がパリ社会で健やかに過ごすために、私が気付かないほどありがたい存在なんだと思う。

今住んでいるアパルトマンは、住人に似ている。以前なんとかという巷では有名の芸術家が使っていたアトリエで、綺麗なのだけれど、人が暮らしたことが窓枠だとか床を見ると一目稜線で、その辺がなんとも彼女っぽい。このアパルトマンは長屋のようになっていて、隣人が誰かもみんなが知っていて、よくも悪くも生活の音が聞こえる。ちなみに、隣の隣の初老のロシア人の女性は、とても愛らしくて、こくっとゆっくり会釈をしてほほ笑む。この隣人は、私のルームメートと仲良しで、互いに何かあった時のための合鍵を持っている。なんとなく、祖母が水道橋に住んでいた頃の隣組を思い出す。そういうのが、私にとっては温かいから居心地がよいのだと思われる。

ルームメートはとてもゆったりしていておっとりしているのだけれど、同時に独立独歩で、その辺の独立心が妙に心地よいもう一つの所以のようだ。彼女のボーイフレンドは白衣の作業委が似合う画家で、私は写真でしか拝見したことがない。彼はパリの外に住んでいるから、彼女はパリとパリの外を行き来する。ルームメートは私よりも一回りは年上で、年齢からくる熟成したまろやかさなのかもしれないけれど、たぶん昔から、温かみと独立した部分を持ち合わせた人なのだと察する。そういうコンビネーションはなかなか稀有だ。

面白いのは、彼女の場合、結婚制度にはそこまで興味はなくて、でもパクスはいい制度だと思っていて、その辺がステレオタイプなフランセーズなわけだけれど、話を聞いているうちに、たぶん制度上の縛り以上に、空間的自由を求める空間自由人なのだと勝手に考えるようになった。理想は、好きな人と隣通しに住んで、真ん中に互いの共有の部屋があって、けれどお互いの家・部屋もあるよ、という感じなんだそうだ。

人の数だけ住み方があるし、空間の心地よさも違うだろうし、けれどデベロッパーが作る住まいといったら、社会が考えているモデルといったら、ちっともその辺の多様性に対応しているようには見受けられなくて。時に人々が窒息しやしないかと心配になるのだが、その社会にいればそれぞれ適応しているし、事実私もそうだったのだから、窒息せずともやり過ごすことはできるようである。でも、空間が人を縛るのでなくて、人が空間を決める住まいのあり方を考えたりする近頃。

日本はデベロッパーがとても幅を利かせている。じゃフランスがいいというわけではないでありましょう。たとえば、ラデファンスの当たりは、1981年以前はデベロッパーがかなり幅を利かせていて、あとはそれ以外のアクター達がアクティブだったらしい。ミッテラン政権以降、かなり政府が口を出しグランプロジェを作るようになったみたいである。

デベロッパー任せじゃない長屋のような、レゴみたいに住み手がいろいろできる楽しい家は、ボトムアップでもトップダウンでもない、たぶん、個人からでも始められるかなと思う。

少なくとも、このアパルトマンには、そういうものが自ずと根付いているようである。
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by Haruka_Miki | 2008-11-20 00:00 |
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