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パリ発 五感の穴

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一年

去年の9月7日に日本を発ったので、東京から生活の拠点を移してから、もうすぐ一年が経ちます。

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早いものだけれど、本当に色々なことを目にし、聞き、感じ、たくさんの人に出会いました。父から借りたスーツケースに、エールフランスの限度重量ぎりぎりに詰め込んで、それだけでは足りなくて、こちらも父から借りたキャリーオンケースに入れるだけのもの、そして萌黄色のリュックを背負って、大切な家族と友に見送られ発ちました。歩きやすいようにとコンバースの靴で成田を歩く時に感じた、そうこれから踏み出すのだ、というリアルな緊張と期待が混ざった感情、パリについて一週間目に小さな屋根裏の寮の部屋で感じた言い表せない不安、それを裏切る沢山の出会い、沢山の読み物、沢山の芸術、そして一年の実際ほとんどを占める素敵なしかしいたって日常の生活。実は日常の生活こそに、喜びを噛みしめた一年でした。

立ち位置が変わることで何か変化があったのか、そう考えると、変わったところもあるし、変わらないところもあって、結局これはどこの国に住まおうが、どの都市に居を構えようが、社会人だろうが学生だろうか変わらないものがあります。三つ子の魂百まで、なのです。どうやら。小さな変化と言えば、OL時代に増して堅実な生き方をするようになったこと。貸方よりも明らかに借方が多いのだから、これは当然なのですが、後ろ盾のありがたみをこれほど感じた年はなく。変わっていないところと言えば、相変わらず旅が好きで、和食が好きなところ。そうした生活面以外での信じるところは、相変わらずさして変わっていないようにも思えるのですが、去年よりも爪の白い部分位だけちょっぴり、世の中を斜に構えすぎず見られるようになった、ないし見ようと思えるようになったこと。世の道理でふと疑問が湧いた時に、感情に任せて結論付けを急ぐよりも、そのプロセスに興味が湧き、道理と思っていること自体が、実は自分の色眼鏡を通じてかもしれないこと、そういうことを感じたのでした。

これは勉強面でも言えることで、というか勉強面で特に思えた変化でした。社会人になるまで、学校で社会学をメインに学んだ私は、社会学的思考というのが好きであり、今でもその気がかなりあるのですが、証券会社で三年働き、内を垣間見て今は外に、その後公的機関で働き、内を垣間見て今は外に、そしてジュネーヴで国際機関の内を見て、もうすぐまた外に、こういう反復練習の中で見えたものは、社会学的思考が実は実社会では意外にも大変役立つのだという発見であり、同時にそれは始まりであり、途中経過であり、結論付けに活用していくものではあるのだけれど、決して一つのDefinitiveなロジックを見いだせるものではないということです。矛盾するようですが、その中で社会学というものが与えてくれる世界の拡がりを今一度認識しました。これは、たぶん社会学だけでなく―というのもこれは一つのカッコ付けの学問という意味でなく、形而上学・人類学・理論経済学と他の分野にも言えるわけで、社会科学の礎に流れるもの全般―、それが示唆するものは大きいのだということを感じました。

今私は、より実践的な勉強をしていて、それは行政の政策分析などを含みます。現在ジュネーヴで行っているインターンもまさに政策に関わるところなのです。たいがいは経済学者や法律家のバックグランドがあり、私はそういうところで沢山学ぶところがあるなと思う日々なのですが、社会学というバックグラウンドに短いながらも仕事をし、公共政策というマクロだけれど実践的なものが重なり今が在るなと多いに思ったりしております。都市開発に関心を抱いて公共政策大学院に入りましたけど、その中でのベクトルがよく定まらなかった一年目、ようやく今になって、過去の勉強・今の勉強・有給無給両方の職歴を通じで感じた関心が、ある程度まとまってきたと思われます。

人様の中には一つ一つの目標を明確に設定し、それをこつこつ成し遂げていく方がいて、私はそれをとても尊敬するのですが、私の場合は、これが今はよさそうという直感で選択をし、けれどそこに何らかの執念がどこかしらあって、何となく気づいてみるとそれを重ねてみたら何となく道だったかしらという感じの人生です。

9月下旬からいよいよロンドンで二年目です。この一年は、大学院一年目で、ジュネーヴで明らかになってきた都市開発の中で見出した関心を温め、色々と見聞きして、そのうちの小さい事象をこつこつ学ぶ年にして参りたいと思います。
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by Haruka_Miki | 2009-08-25 00:00 |

ハリネズミの映画

昨夜は建国記念日で沸いたスイス。スイスの国旗や動物をあしらったまあるいランタンがとびきり可愛らしく。湖沿いには大きなチーズフォンドュがお目見えしたり、ボートレースが行われたり、ジュネーヴはいつもの静けさとは考えられない大賑わいでした。ジュネーヴはいまいち文化的面白みがない、という思いで今までいたのですが、夏のジュネーヴは芝生の上で、公園で、街角で、楽器を演奏したり、歌を唄ったり、それもクラシックからアフリカンタムタムをベースにしたオルタナティヴまで様々。こうして見ると、今まではなぜ彼女のような人が、といまいちよく理解できなかったのですが(失礼な)「存在の耐えられない軽さ」の芸術家・サビーナが一時住んだ街というのも納得する最近です。

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さて。今日はそのようなお祭り騒ぎも忘れてしまう程、素敵な映画を観ました。フランス映画「Le hérisson」です。昨日パリから、この映画を大絶賛のメールをもらい、スイスでも公開されていたので行ってみました。個人的に、先日パリで観た「おくりびと」なども海外で観るからか、とても琴線に触れたのですが、今日観た映画は、ここ最近観た映画の中でも一番印象深かった作品の一つと言ってしまってもいいかもしれなさそうです。パリは十六区、ボーダーシャツに金縁の丸眼鏡とくるくる頭がかわいいけれどちょっと内向的な十二歳のインテリ、お洒落もせずに唯一の快楽はブラックチョコレートとお茶を手元に本の管理人さん、引っ越してきたばかりで小津安二郎と苗字が同じのミステリアスな日本人の紳士、猫は家に閉じ込めておくけれど、管理人は家の中に入れない母、などなど、キャラクターの厚さが光っており。Sauvage(野蛮)だけれどエレガント。この二つの絶妙なコンビネーション。

お話は皆様の楽しみを奪ってしまうから省略させて頂くとして、この映画が日本でも公開されることを切に願います。というのも、監督さんは、大の日本びいきで現在もご夫婦で京都のヴィラ九条山にお住まいとか。元々はベストセラーの小説をベースにしているのだそうですが、映画で映像化されているイラストなどの世界観がとても素敵でありました。ちなみに、le hérissonとはフランス語でハリネズミのことだそうです。私が大好きな二大動物の一つです!(もう一つはアルパカ)その辺りでも個人的にかなり自身の情感に合った映画でした。



"Toutes les familles heureuses se ressemblent, mais chaque famille malheureuse l'est à sa façon".『幸せな家族はすべて似通っているが、不幸な家族はそれぞれ違う風に不幸である』アンナ・カレーニナの冒頭より
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by Haruka_Miki | 2009-08-02 00:00 | 芸術