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パリ発 五感の穴

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周五郎さんの続き

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(チリ・サンチャゴの道端の画廊)

周五郎さんには続きがある。読書はたいがい、カフェだか、黙って木の下だか、机に向かってだか、ソファに寝転がって自分自身の思考を道連れに、無音の中で、頭の中で作者の言葉を繰り返すことを至福とする。そうしてすっかり一つの世界観に包まれながら氏の本を読んでいる時、同僚がその本を読んでいる私を見つけた。聞けばぜひ読みたい本なのだ、と言う。読み終わったし、とにかく印象的であったので、読み終わると、ある朝、その本を同僚の机にそっと差し出した。同僚もまた感銘を受け、隣の席の同僚にまた貸しし、それ位よかったのだと同僚が感激したのを聞いて私もとても嬉しくなった。お礼に、今度は、同僚から私に本の貸し出しがされた。今度は他の群集劇な小説を同僚にお渡しした。

こういうのはよくあって、音楽や本や映画などの薦め合いは楽しい。大体、趣味が極めて内省的なものであることもそれに影響するのだが、やはりこうした芸術作品を共有して楽しむことが、自己完結的に終わりがちな世界を拡げてくれる。そして、自分の大切な人間や、そこまでいかずとも他人様を知る上で、こうした作品が一つのキーになることが往々にしてあるからだと思う。同じ作品を互いに好きであることの共感は、心地よい。同じ作品を手に取ろうという決断自体もまた、乙である。

小学生の頃の記憶と共によみがえる。小学校で、本を借りるときには、必ず自分の名前を裏の貸し出し証に記入するわけで、ある本で見た名前が、次に選んだ本にも登場すると、小学生ながらに相当胸を躍らせた、そんな過去の記憶は今に通づるところもある。
by Haruka_Miki | 2008-06-26 00:00 | 芸術
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